アフターコロナに向けての旅行需要回復の見込み

日本でコロナ禍に突入したのがクイーンエリザベス号でのコロナウイルスが発生した2020年2月です。triplaでは2020年1月に台湾支社を設立したこともあり、2020年2月下旬に台湾に出張に行きましたが、それが最後の海外になりました。
そこから旅行業界においては長い長いトンネルに入ったわけです。2021年9月でもう1年7ヶ月がコロナ禍に入って経過したのですが、今回コロナ前とコロナ禍でどれだけ宿泊業界に影響を与えたのか、ワクチン接種も進みかすかに希望が出始めた今、どんなシナリオが考えられるのかをまとめてみました。
実は日本の宿泊業界での宿泊者数は実は観光庁から毎月データが更新されています。日本人と外国人のそれぞれの宿泊者数が出ております。また、宿泊業の市場規模もこちらにデータが掲載されております。
こちらを纏めてみますと、2019年1月から12月の宿泊市場規模と宿泊者数の推移は以下のようになります。2019年の宿泊市場規模は6.5兆円の市場規模でした。宿泊者数も6億人近くが宿泊しておりました。内訳としては、日本人の国内旅行が4.8億人、外国人のインバウンドが1.2億人です。2019年までは観光地に行くと外国人が多いなという印象でしたが、それもそのはずで宿泊施設に泊まっている20%近くが外国人だったのです。

ところが、2020年2月のクイーンエリザベス号より端を発し、日本の旅行需要は大きく減少しました。その影響は2020年3月から鮮明に表れています。2019年3月の市場規模が5,218億円に対して、2020年3月は2,805億円と昨年対比54%まで市場が縮小しています。第1回の緊急事態宣言が発動された2020年4-5月にかけては、5月の2020年5月の市場規模は1,071億円まで減少し、2019年比では19%まで落ち込みました。特に外国人宿泊者数は99%減少しています。

2020年に数値として注目すべきなのは、10-12月の国内宿泊者数の回復です。GOTOトラベルキャンペーンが実施され一時的に旅行需要が回復しています。12月の帰省需要時の際にはGOTO中止が決定したため12月には旅行需要は減少していますが、10月は2019年と2020年の比で87%、11月は90%まで回復しています。GOTOトラベルが旅行需要復活のための起爆剤であることは間違いありません。

2021年6月までの市場規模は実績値です。また、宿泊者数では2021年7月までが実績値です。7月には東京五輪も無観客であったことからそれほど旅行需要増には寄与しなかったが、東京五輪が開催されたことから2019年比で60%程度まで需要が回復しています。2020年がコロナ初期で皆さん需要減が激しかったと思いがちですが、実はGOTOが打ち切られた2021年1月から6月が宿泊業界では最も厳しかった期間でした。
それでは、ここからが本題です。この後、旅行需要はどのようにして回復していくのでしょうか? 私はワクチン接種率が主たる回復要素だと考えています。ワクチン接種が進むことで、高齢者はコロナにかかりにくくなることが実証されつつありますし、2021年9月時点で既にアメリカを抜きイギリスの接種率を猛追する日本の状況が見て取れるからです。そもそも、コロナの恐怖はどこから来ているのでしょうか? それは、感染して死ぬリスクがあることです。感染後1-2週間風邪で寝込むがその後回復するだけであればここまで皆さん騒ぎません。リスクは死亡リスクです。この死亡リスクが極小化することで皆が日常生活を取り戻すと考えています。ワクチンを接種し、感染リスクが減少し、重症化リスクが減少し、死亡リスクが極小化することで、人々は動きを取り戻すと考えています。
コロナの恩恵でZoom等でのオンラインミーティングが普及しましたが、これから先も全てのミーティングがオンラインで充足できるのかと言えば難しいと考えています。プロダクトやサービスを1から100に伸ばす過程においてはオンラインミーティングは非常に有益です。なぜなら、お客様は既にサービスを導入して成功した競合から噂をを耳にして、予備知識をもった上でオンラインミーティングに臨んでいただけるからです。しかしながら、新たにサービスを生み出し、サービスを0から1にするのはオンラインミーティングだけでは難しいと思います。triplaでも幾度となく経験してきましたが、サービスを0から1にする過程では、情熱が必要であるからです。情熱はオンラインよりもオフラインの方が伝わりやすいです。加えて、買い手からの忌憚の無い意見はオンラインよりオフラインの方が言いやすいことも事実です。買い手からの所謂ダメ出しを受けることによりサービスは進化を遂げ、市場に受け入れられるサービスへと成長していくのです。
そのため、新規ビジネスを生み出すためには、人は動きを取り戻し、顧客の元へ足を運び、ダメ出しを受けて、サービスを作り直し、再度訪問し情熱を伝えるといった動きが再度生み出されます。この状況がいつから再開するかが宿泊業界復活の一つのトピックだと考えています。
宿泊市場復活のためのもう一つの要素はインバウンド需要の復活です。コロナ前は20%の需要がインバウンドでありました。この需要はコロナが収束すれば必ず戻ってきます。ただ、問題はどれだけの需要がいつ戻ってくるのかです。
では、回復のシナリオを考えていこうと思います。
1. GOTOトラベルの復活で国内需要がコロナ前の100%水準に回復
GOTOトラベル無くして宿泊業界の市場規模復活は難しいと考えています。GOTOトラベルが東京を含めて実行されていた2020年11月のデータを見てみますと、2019年11月との比較でも、宿泊売上で80%、日本人の宿泊者数で90%レベルまで復活していることがわかります。ワクチン接種が完了し、安全が担保された状態でのGOTOトラベルの再開となれば2020年11月比ではなく100%を少なくとも超えるレベルで需要が復活すると考えられます。では、時期はいつからか?これが難しいですが、衆議院選挙が終わり内閣が組閣された後の2022年1月からは再開していただいたいものです。
2. インバウンド需要の復活
更に難しいのがインバウンド需要の復活タイミングです。こちらは日本人がワクチンを打ち終わるだけではなく、外国人も打ち終わりある程度の安全が確保されたタイミングになりますので、2022年3月から少しづつ緩められ、5月くらいか復活が始まるのではと期待しています。2022年中は完全復活は難しく、2022年の年末で75%程度、2023年の年末で90%程度、完全復活は2024年くらいからかなと考えています。
期待値も含めた上で、上記GOTOトラベルとインバウンド需要の回復をベースに2022年の宿泊市場規模と宿泊者数を予想してみました。

日本人の宿泊者数が2019年並みに復活し、外国人はゴールデンウィークあたりからちらほら戻ってくる形です。市場規模は5.8兆円となりコロナ前の2019年比で80%程度まで回復です。2022年の年末にこのブログの答え合わせをして、私の予想を大きく上回る回復をして予想が外れてもらうことを願っています。