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ホテルと旅館の自社ウェブサイト集客への高まり

更新日:2020年8月14日

旅行に出かけると決めたときに、皆さんがまずやるとは予約ですよね。飛行機や電車の予約と同じように旅マエに泊る場所の予約は必須です。宿泊の予約方法は色々あると思いますが、今回は予約手段と業界を取り巻く環境についてまとめてみました。

まず、予約方法です。楽天トラベル、じゃらん、Expedia.co.jpといった予約サイトから予約される方が多いかと思います。これらの予約サイトは、通称OTA (Online Travel Agency)と呼ばれています。他の予約方法としては、航空券と宿泊を同時に予約するダイナミックパッケージと言われる予約になります。大手航空会社のJALでは「JALダイナミックパッケージ」、ANAでは「旅作」といったページからの予約がこちらに該当します。(以下、本記事ではダイナミックパッケージを通じた予約もOTA予約と呼びます。) もう一つの方法が、ホテルのウェブサイトへ行き、宿泊予約ボタンをクリックし、自社ホームページから予約する方法です。

現在、多くの旅行者はOTAを使用して予約を行っておりますが、多くのホテルや旅館が今後考えていかなければいけない課題が自社ホームページからの予約数を増加させることです。宿泊施設に取って一番大事なものは売上と利益です。売上を最大化することを目的とするレベニューマネジメントの概念から、宿泊施設では空室が「最」も悪とされてきており、空室が多い (稼働率が低い) と売上と利益が下がり、空室が少なければ少ないほど (稼働率が高い) 売上と利益が担保されてきました。この考え方は今後も踏襲されていきます。これまで稼働率が低い場合、宿泊施設は特別料金をOTAを通じてお客様に提供し、稼働率の向上を図ってきました。その結果、旅行者は宿泊予約を行う場合、まずOTAへ行き宿泊施設を探すといった行動が一般的になってきたのです。その結果、宿泊施設は集客を自前で行うのではなく、OTAにお願いする傾向が高まってきました。通常OTAは宿泊料金の8-20%を宿泊施設に送客手数料として徴収するため、その費用負担は宿泊施設に取って大きな金額となって圧し掛かってきているのです。

それでは、OTAへの手数料金額を図解して解説していきます。ホテルの売上にとって重要な指標は、客室数・ADR (Average Daily Rate: 平均客室単価)・稼働率になります。仮に客室数を200部屋、ADRが15,000円、稼働率90%のホテルの30日間の売上を計算しますと 200 x 15,000 x 90% x 30 = 8,100万円の月間売上になります。もし、このホテルが94%の集客をOTA (手数料平均13%) に頼っており、自社ウェブサイトからの集客が6%であったら、OTAへの支払手数料は、 8100万円 x 94% x 13% = 990万円と月間売上の12%になります。集客は非常に大事ですが、費用負担割合はかなり大きいですよね。



それでは、OTAはこの手数料を何に使っているのでしょうか?答えは値引、利便性向上の為の開発、そしてマーケティング費用になります。旅行者がOTAを選ぶときに重要視することは、品揃え、価格、予約利便性、そして認知度になります。品揃えはどれだけ多くの宿泊施設が掲載されているのか?やどれだけ魅力的な宿泊プランが掲載されているのか?によります。価格は、同一の部屋や宿泊プランではあればどのOTAから予約するのが最もお得なのか?を旅行者は選定します。予約利便性は予約導線の工夫です。予約に際して個人情報を大量に入力することを求められたら誰も予約しませんよね。各OTAではいかに簡単に予約が完了するかを常に考えています。そして、認知度です。IT革命後数年は限られたOTAが品揃えと価格を押し出し集客をしてきましたが、現在数多くのOTAが台頭し、それぞれが豊富な品揃えと100円単位の価格の上げ下げを行ってしのぎを削っております。予約利便性も他社が開発を行うと自社でも同機能の開発を急ぎます。また、旅行者に選ばれるOTAとなるため、各社認知度を高めるためにマーケティング活動に非常に力を入れております。各施設から徴収された手数料は値引、利便性向上の為の開発、そしてマーケティングに使用されているのです。

宿泊施設に取ってこのお金の流れは有用性が高いものなのでしょうか?その答えは「Yes」でもあり「No」でもあります。

「Yes」の場合とはどのようなケースか解説していきます。新規に200部屋規模の1施設オープンしたホテルがあるとします。そのホテルは知名度も低く、1施設と規模も限定されております。このような状況下で集客を効率的に行うにはどうしたらよいでしょうか?自社でマーケティングを行い、自社で予約利便性の向上を行う為の開発を行うと多額の費用が発生します。しかしながら、OTAへ宿泊プランを掲載するのであれば費用は主として手数料に限定されまので、効率的に集客を行っていくことが可能になります。

一方で、「No」の場合はどのようなケースが考えられるでしょうか?50施設規模を運営している一大ホテルチェーングループで日本人であれば皆がそのホテルグループの名前を知っているとします。その場合、規模の経済性を享受できるため、自社でマーケティング、自社で予約利便性の向上を行い、自社で決めた価格で販売すれば効率的に集客ができることになります。

そもそも、OTAは認知度の高い宿泊施設から得た手数料を使用して、認知度の低い宿泊施設のマーケティングも行うわけですから、認知度の高い宿泊施設からしますと手数料過多と感じるケースが多くなるのです。

また、昨今ではインバウンド旅行客の増加に伴い、各宿泊施設の稼働率が一律高まってきている傾向にあります。その為、これまで稼働率を高めるために活用してきたOTAですが、これ以上稼働率を高めるのが難しい状況にあるというのも実情です。各宿泊施設は利益率拡大の為に、自社ウェブサイトからの集客を高める機運が高まってきております。

インバウンド特需といったものが存在しない海外のホテルにおいてはもうすでにこの取り組みは進んでおります。



この画像は、台北にありますシャーウッドホテルのフロント前に置かれたデジタルサイネージです。なんと、自社ウェブサイトから予約をされたお客様は700台湾ドル (3,000円くらい)の値引になるのです。特にリピーターに対して手数料を払わず直接予約してくださいねとのメッセージでサービス業としては当然の動きですよね。

宿泊施設以外のチャネルにおいては当然の予約導線でありますが、これまで宿泊施設ではあまり活用されてきませんでした。例えば、ある紹介サイトから美容室を予約したとしても同じ店舗に2回目に行くときは殆どのお客様は電話やネットで直接予約する傾向にあります。

では、先ほど挙げた事例で、もし自社ウェブサイト予約比率が6%から20%に改善したら同ホテルの利益はどのように改善するのでしょうか?



なんと、売上の約2%にあたる148万円の手数料削減効果があるのです。これは取り組まない手はありませんよね。

では、どのように取り組みを進めていけばよいのでしょうか?答えは以下のステップになります。

 1,現在のウェブサイトへの訪問人数を調査する  2,ウェブサイトの予約導線の見直し  3,ウェブマーケティングの実施  4,予約エンジンの変更

各内容に関しては別記事で解説していきます。

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