ホテル自社WebサイトのKPI
今回の投稿では、宿泊施設の自社Webサイトにおいて見て頂きたいKPIについて説明していきます。

宿泊施設の自社Webサイトがそもそも存在する目的ですが、私が考えるに以下の4点であると考えています。
宿泊施設の良さをお客様に伝える
お客様からの予約を取る
アクセスや宿泊するに際しての必要情報を伝達する
宿泊以外の飲食や会議室等の予約を取る
こちらの目的を達成しているかを測定するに当たって、見るべきKPI項目は、
・お客様が多くのページを閲覧しているか?
・お客様は予約までスムーズにたどり着いているか?
・必要な情報を見つけられているか?
・宿泊と宿泊以外の予約を混乱せずにスムーズに実施できているか?
になります。
上記に加えて、そもそも自社Webサイトに流入しているお客様の数ももちろん分析する必要があります。
では、どういったKPIを見ていけば良いのか解説していきます。
UU (ユニークユーザー数) - 自社Webサイトへの流入数になります。そもそもお客様がWebサイトに来ていないのであれば来ていただけるようなマーケティング施策が必要になります。ここでWebサイトにお客様がたくさん来ているのか、全く来ていないのかを宿泊施設が判断することが難しいと考えている宿泊施設の方が多いと考えております。なぜなら、自社WebサイトのUUを見てもその数字が多いのか少ないのかを判断する指標が無いためです。ここで、私は宿泊施設のUUとしてどの数値が適切かを判断する指標を大まかに説明していきます。
宿泊施設は、大きく分けると、ビジネスホテル、シティホテル、リゾートホテル、旅館の4種類に大別できると考えています。
例として、ビジネスホテルの適正なUUを計算していきます。ビジネスホテルは別名宿泊特化型とも言われ、基本的には宿泊を目的とするホテルになります。ですので、ビジネスホテルの自社Webサイトに訪れるお客様は宿泊を目的としているお客様がメインとなります。triplaではビジネスホテルカテゴリーにおいて予約コンバージョンの平均を算出しておりますが、概ねUUに対して12%のコンバージョンでお客様が予約します。つまり、月間10,000人のUUがあるとすると、1,200件の予約が入ります。殆どのホテルから旧来の予約エンジンからtriplaに変更することで予約率が倍になったと言われておりますのでtripla以外の予約エンジンでは5%程度ではないかと推測されます。
では、あなたがビジネスホテルチェーンの担当者で、10施設経営、合計1,000室のビジネスホテルであり、稼働率目標が85%で、自社Webサイトからの予約目標が20%である場合、自社Webサイトからの予約数は 1,000室x30日x85%x20%=5,100室と算出することができます。1予約あたりの予約室数が1.2室である場合、5,100÷1.2=4,250件の予約を獲得すると目標が達成できる試算となります。ここで、一つ考慮すべきポイントはキャンセル率です。予約していただいたお客様が全員宿泊していただくことは難しく、40%程度の予約はキャンセルされます。ですので、キャンセル率を考慮すると4,250÷40%=10,625件の予約が必要となります。予約コンバージョンが12%であれば、10,625÷12%=88,542UUを月間取得することで目標が達成できることがわかります。1施設平均であれば、概ね月間9,000UUが目標とすることができるわけです。
リピート率が高いビジネスホテルとは異なり、リゾートホテル、旅館に関しては1.5-2%程度を予約コンバージョンに、シティホテルに関しては飲食などホテル以外の目的でのWebサイト訪問割合を鑑みて予約コンバージョンを割り出すことが最適だと考えられます。ただ、一般的には1-1.5%程度の予約コンバージョンとなると考えられます。
予約コンバージョン (予約転換率) - 上記の例でも説明した通り、UUに対しての予約コンバージョンを常に確認する必要があります。季節によって、プラン構成によって、残室の持ち方によって予約コンバージョンが変化する可能性は十分にあります。常に確認する必要があります。
例えば、シングルルームの残室がある場合の予約コンバージョンが6%であるのに対して、シングルが満室となり料金が高いダブル・ツインの予約コンバージョンが3%であったとします。こちらの施設、100部屋あるが、シングルが50室でダブルが20室、ツインが30室、シングルのADRが8,000円、ダブルとツインのADRが12,000円であったとします。ビジネス利用の多いホテルでシングルは平日常に満室になるがツインとダブルは常に空きが20室出るホテルだとします。この場合、シングルが満室になってしまったとしてもツインとダブルの残室20室分をシングルとして売り切ってしまった場合、20x8,000円=160,000円の売上増、予約室数では20室の増加になります。シングルで予約した20室分のお客様に対しては当日、ツインもしくはダブルにアップグレードさせて頂きますとお伝えすればお客様からそれは困るといわれることも無いので、Win-Winの状況を作り出せる訳です。予約コンバージョン分析を行うことでこのような戦術的なアクションを取ることが可能になります。

Traffic Channel UU (トラフィック経路毎のUU) - 上記の例からも獲得UUの目標ができたら次にどのチャネルから獲得するかを考えていきます。月間UUの目標が9,000で現在7,000であったとします。残りの2,000人をどのようにして集めるかをチャネル別に見ていくのです。
チャネル別の詳細は以前に投稿したブログで解説しております。
ここでは、Social、Email、Referralといったホテルの自助努力で伸ばしていけるチャネルについて補足します。Socialは様々ございますが、Facebook、Twitter、Instagramはアカウント開設も運用も広告を使用しなければ無料です。日々、ファンが増やす投稿を行うことで、Social経由の流入を伸ばすことが可能になります。triplaでもSNSの運用代行を行っておりますので興味をもった宿泊施設様は是非お問い合わせください。また、Facebookでは、お客様からの質問に対してtripla AI Chatbotで回答も可能になります。
Emailは情報としては蓄積しているが活用していない宿泊施設が多いのではないでしょうか? 日本のホテルでは宿泊して以降定期的にメールが送られて来ることが稀です。一方で、海外のホテルでは定期的にメールが送られてきます。メールが送られてくることで、宿泊した時のことを思い出すこともできますし、次の旅行の選択肢の一つになる可能性も十分あります。是非、過去に宿泊したお客様へ定期的にメールマガジンを送信してください。triplaではラクス様が提供する配配メールとの連携が行えます。こちらの機能を活用することで、セグメントを切ったメールを送信することも可能です。例えば、一度宿泊したことがある家族、ビジネス利用の個人といった形です。
Referralは紹介経由でのトラフィックになります。ブロガーやホテルまとめサイト等と連絡を取りリンクで誘導さしてもらうことをお勧めします。
以上のチャネル別に費用をかけるのかかけないのかも含めて2,000UUの積み増し計画を立てることをお勧めします。
他にも見込み客の流入を測定するKPIとしていくつかございますので紹介します。
Session (セッション) - Googleでは30分操作がなされない、日を跨ぐ、Webサイトから出る時にセッションが切れます。UUよりもSessionの数が多いのは、1ヶ月単位で数字を見ると10,000人UUがいても20%の同じお客様が2回Webサイトを訪れていると、Sessionは12,000になります。
New Session Ratio (新規セッション率) - 新規セッションは見込み客が該当期間内に初めてWebサイトを訪れた率になります。数字が高すぎるとリピート率が低く、数字が低すぎると新規顧客の獲得ができていないということになります。
Pages/Session (平均ページビュー) - 平均ページビューは1 Session当たりに何ページを見たのかを測定するKPIです。Webサイトのコンテンツが充実していればこの数値は高くなりますし、Webサイトが1ページで構成されて入ればこの数字は1になります。
Bounce Rate (直帰率) - 一番最初にWebサイトを訪れて、他のページを見ずにWebサイトが閉じられた率になります。何ページか見た後にWebサイトを見込み客が去った場合は離脱になります。
ここから再度、宿泊施設寄りにKPIを説明していきます。
Marketing Cost (マーケティング費用) - 宿泊施設の方とお話しする中で、あまりマーケティング費用について触れられることがありません。おそらくOTAへの手数料や広告費用は予算化しているが、自社Webサイトの集客費用はそこまで細かく予算化していないのではないでしょうか? 一般的にECサイトであれば売上の5%程度は予算化していると思います。物販のECサイトは粗利益率が20-30%程度が平均としても粗利益の20%程度を費やしています。ホテルの場合は、OTA経由の集客費用との比較を行うことをお勧めします。海外OTA手数料が15%であったとすれば、私個人的には15%までは自社Webサイトでもマーケティング費用をかけるべきだと考えております。自社Webサイトを訪れて予約してくれたお客様は会員になっていただける可能性も高いですし、少しずつでも自社Webサイト比率を高めていけるためです。自社Webサイト比率が100%に到達した場合、もちろん少しずつ広告費は減らしていくべきだと思います。ファンが多いホテルに成長したことで広告費を減らした分、利益になるためです。
以上、UUとコンバージョンを中心に説明してきましたが、是非、予算を立てる際にも、UU、コンバージョン、マーケティング費用の目標を作成してみてはいかがでしょうか?